PERという株価指標を聞いたことがあるでしょうか?Price Earning Ratio
の略称で、日本語では「株価収益率」と表します。株式投資家にとってはポピュラーな投資指標の1つです。
株式投資を覚えたての方は、「PERが10を下回っている銘柄は、株価が割安だから買い!」となるケースが多々あります。自分もそうでした。
しかし、PERの数字それ自体が重要ではないのです。この記事では
- PERとはどのような指標か?
- PERはどのように動くのか?
- PERだけで割安・割高の判断をするのが危険な理由
- EPSとビジネスモデルの強さがポイント
の4点について、具体的にまとめます!
PERとは?
PERは以下の式で算出されます。
PER = 株価 ÷ EPS
EPSとはEarning Per Share
の略称で、日本語では「1株当たり利益」と表します。ここで利益とは当期純利益のことを指します。EPSは以下の式で算出されます。
EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
つまり、“株価が下がる”または、”EPSが上がる”ことによってPERの値は低くなります。
PERはどのように推移するのか?
では、PERの構成要素であるEPSと株価の動き方から、PERは実際にどのような推移をするのかを整理してみましょう。
EPSは年に4回しか更新されない
一部の例外を除いて、株式会社には3ヶ月に1回、決算公告の義務があります。
つまり、3ヶ月ごとに「どのくらいの売上と費用がかかって、利益はこれだけ出ましたよ」という内容を報告する“貸借対照表”を開示する必要があります。
貸借対照表を見れば、その企業が3ヶ月で1株当たりどのくらい利益を出したか?つまり、EPSが分かります。
EPSが開示されるのは決算期のみですので、投資家は企業のEPS情報を年間4回しか知ることができません。
株価は未来のEPSを想定して動く
日々の株価というのは投資家の需給関係、つまり「この値段なら買った!売った!」というオークションを無限に繰り返しながら変動しています。
そして、投資家が「買った!売った!」の判断をする基本的な材料は、これまで企業のEPS推移と経済ニュース(材料と呼ばれます)から考慮した今後のEPS予測です。
企業が発表するEPSの確定情報は年間4回、そしてアナリスト予測EPSは週1回更新されますが、株価は営業日は毎日動きますので少しラグが生じます。
また、アナリストも預言者ではないですから、予測EPSが実態と完璧に一致する訳でもありません。
日々のPERというのは投資家の需要に過熱感が出た場合、株価の上昇に伴い上昇し、需要が冷めて株価が下落した場合低下します。
直近PERだけで株価の割安度を判断するのは危険?
なるほど、ではPERが低い = 株価は安くなっていると言えます。このパターンは全て割安株と言えるのでしょうか?KDDIの株価を例に挙げて考えてみましょう。日足チャートです。

KDDIは9月上旬から、株価が急落しており、一時はコロナ禍で下落した水準まで達していました。
これは菅総理が「携帯料金の値下げを強く推進する」と発言したことから、「実現したらEPSが下がる!」と投資家が考え、株価が先行して下落したからです。
携帯料金値下げによるKDDIの株価への影響は以下の記事にまとめていますので、ご覧ください!
優良な株主優待、配当利回り4%超えの高配当に加えて、業績も好調な大手通信キャリアKDDIは投資家に人気な株の1つです。一方で株価はこの2週間で10%強下落しておりかなり不調な状態。今回の記事ではKDDI株価が不調となった経[…]
10/8の終値は2726円でした。会社予想ベースのPERは9.8倍となっており、PERの数値だけを見ると割安に見えます。では今の株価は割安で買いなのか?というとそうとも限りません。
なぜなら、菅総理が携帯料金の値下げを実施した場合、”KDDIのEPSがどこまで下がるのか?”が現状未知数だからです。
本当にEPSが下落した場合、株価の変動なしでPERは上昇するため、現状が割安ではなくただの適性価格となってしまいます。
ですので、具体的な値下げ案が発表されるまでは、あまり手を出したくないなと考えています。
このような業績悪化を見越してPERが下がる株は割安株とは区別する必要があります。
真の割安株とは将来的にEPSが上がる株
ではPERはどう使えば良いのか?真に割安な株は以下の条件でPERが低いものです。
ビジネスモデルに成長性がある
過去データからEPSが上昇傾向にある
投資家からまだ注目度が低く株価が低い
この条件で低PERとなる株をリサーチするのです。
まとめ
この記事では、「PERの定義」「PERはどのように動く?」「割高、割安の判断の仕方」について整理しました。結論としては、
PERは株価を1株当たりの利益で割った指標
業績が悪化・業績向上どちらでもPERは下がる可能性がある
割安株というのは"EPSが高くなりそうなのにまだ株価が安い株"
です。くれぐれも投資は自己責任で!
それではまた次の記事で