NISAを使って株式投資したら節税できてお得だよ!という話はよく耳にします。具体的に何がメリットなのかを整理しました。
今回のポイントは以下の3点です
- 株式・投資信託運用でかかる税金のシステム
- NISA・つみたてNISAの概要とメリット
- NISAは新制度でどのように変更されたか
それでは順番に見ていきましょう!
株式・投資信託と税金
まず株や投資信託の取引によって得られるお金には配当金と譲渡損益の2種類があります。そしてそれぞれに対する課税制度としては、総合課税と申告分離課税という課税方式があります。NISAのことをすぐ知りたいという方はこの章は飛ばしてください。
それでは1点ずつ確認していきましょう。
配当金とは
配当金とは、自分が投資している会社の業績に応じて年に1, 2回 (おおよそ決算時期)に受け取る金銭のことです。また、投資信託の収益分配金も該当します。これを一般にインカムゲインと呼びます。
課税方式は
- 申告不要制度 (源泉徴収あり: 確定申告しない)
- 総合課税 (確定申告)
- 分離課税 (確定申告)
から選択します。
譲渡損益とは
譲渡損益とは、資産の売却で得た 利益または損益を表します。一般に、譲渡益をキャピタルゲイン、譲渡損をキャピタルロスといいます。
課税方式は
- 申告不要制度 (源泉徴収あり: 確定申告しない)
- 分離課税 (確定申告)
から選択します。
申告不要制度とは
配当金や譲渡益について、確定申告しない方式のことです。
証券口座で「特定口座 (源泉徴収あり)」を選択した場合、証券会社が投資家の代わりに特定口座内の年間売却損益を計算して、
所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%
これを配当、譲渡金がいくらであっても
、証券会社が自動的に差し引きます。
総合課税とは
総合課税は税法上で定められる10種類の所得を合算して税金を計算する制度です。
配当所得について総合課税を選択して確定申告する場合、課税所得金額から一定の税金を控除できます。これを配当控除といいます。
配当控除は申告不要制度や申告分離課税では適用されません。
課税所得金額900万円以下の場合、所得税がお得
所得税率は累進税率の計算となり、所得が高いほど税率が上がっていきます。総合課税を選択した場合、配当控除の適用により5あるいは10%の控除が適用されます。つまり実質的な税率が下がるということです。
先ほど申告不要制度を選択した場合の所得税はは配当、譲渡金がいくらであっても15 + 0.315 = 15.315%と述べました。
この税率を配当控除適用により下回った場合にお得という訳です。
次の表に課税所得がどのラインから、申告なしの税率 (源泉徴収税率)と総合課税の税率が逆転するかをまとめています。
課税所得金額 | 所得税率 | 配当控除税率 | 実質税率 | 源泉徴収税率 | お得な課税方式 |
---|---|---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 10% | 0% | 15.315% | 総合課税 |
195万円〜330万円以下 | 10% | 10% | 0% | 15.315% | 総合課税 |
330万円〜695万円以下 | 20% | 10% | 10% | 15.315% | 総合課税 |
695万円〜900万円以下 | 23% | 10% | 13% | 15.315% | 総合課税 |
900万円〜1000万円以下 | 33% | 10% | 23% | 15.315% | 源泉徴収 |
1000万円〜1800万円以下 | 33% | 5% | 28% | 15.315% | 源泉徴収 |
1800万円〜4000万円以下 | 40% | 5% | 35% | 15.315% | 源泉徴収 |
4000万円〜 | 45% | 5% | 40% | 15.315% | 源泉徴収 |
つまり課税所得が900万円以下の場合は、総合課税で確定申告するとお得という訳です。
住民税は総合課税で申告すると損
住民税は課税所得の如何に関わらず、確定申告で損をします。下記の表を参照ください。
課税所得金額 | 住民税率 | 配当控除税率 | 実質税率 | 源泉徴収税率 | お得な課税方式 |
---|---|---|---|---|---|
〜1000万円 | 10% | 2.8% | 7.2% | 5% | 源泉徴収 |
1000万円〜 | 10% | 1.4% | 8.6% | 5% | 源泉徴収 |
申告分離課税とは
申告分離課税は、税法上で定められる10種の所得を他の所得と合算せずに、区別して税金を算出する制度です。
配当金を申告分離課税とするメリットは、譲渡損失と配当金の損益通算ができる点にあります。
つまり、配当金で得た収入から売買で出た損を差し引いた上で、税金を計算できるということです。
ちなみに、特定口座 (源泉徴収あり)の場合は譲渡損失と配当の損益通算は自動的に行われます。
株式・投資信託の税金に関してまとめ
まとめると下記の通りとなります。
- 特定口座 (源泉徴収あり)で申告不要の場合、税額は一律20.315%
- 配当金にかかる所得税について、課税所得900万円までなら源泉徴収なしで総合課税がお得
- 配当金について、申告分離課税では課税所得を譲渡損失と打ち消すことが可能。特定口座 (源泉徴収あり)ではそもそも申告不要
譲渡損益との合算や確定申告の負担等を考えると、特定口座 (源泉徴収あり)を選択するのが楽ですね。
NISAを活用しよう
さて、ここまで株・投資信託の運用で生じる税金について述べてきました。
税金を減らすために色々思考を掻き巡らせるのは結構大変でしたよね。NISA制度を使うと一定の条件下で、上記の売却益や配当金に関する税金を非課税とできます。
NISAはイギリスのISA (Individual Saving Account: 個人貯蓄口座)をモデルにした制度の日本版 (Nippon)ということで 、NISAと命名されました。
種類として、”一般NISA”, “つみたてNISA”, “ジュニアNISA”の3種類があります。
なおジュニアNISAはその利用実績の乏しさから、新規の口座開設期間が2023年までで打ち切られますので今回は割愛します。
また2024年から一般NISAは制度が改正され、やや複雑化しました。その点も含めて各制度の詳細を比較して見ていきましょう。
旧NISA・新NISA・つみたてNISAの比較
項目 | 一般NISA | 新NISA | つみたてNISA |
---|---|---|---|
対象者 | 20歳以上の居住者 | 18歳以上の居住者 | 20歳以上の居住者 |
非課税年間投資上限額 | 120万円 | (1階部分) 20万円 (2階部分) 102万円 | 40万円 |
口座開設期間 | 2014年から2023年 | 2024年から2028年 | 2018年から2042年 |
非課税期間 | 投資した年から最長5年間 | 投資した年から最長5年間 | 投資した年から最長20年間 |
投資対象 | 上場株式、ETF、REITなど | (1階部分) 公募等株式投資信託 (2階部分) 上場株式、公募株式投資信託など | 公募等株式投資信託 |
旧NISA、つみたてNISAの違い
旧NISAは年間120万円 × 5 年 = 600万円を非課税で運用する短期投資である一方、つみたてNISAは年間40万円 × 20年 = 800万円を非課税で運用する長期投資です。
また、対象商品も異なっていて、一般NISAは上場株式やETFなどを選択できますが、つみたてNISAは金融庁の指定したインデックス投資信託の中からのみ選択できます。
つみたてNISA対象商品はこちらから。金融庁が厳選しており比較的安全なラインナップとなっています。
また一般NISAの場合は非課税期間5年満了後に、新規一般NISA口座へ移管することで非課税期間を5年から10年へと延長することができ、これをロールオーバーといいます。
自身で投資先企業を選択して運用する力量と余裕のある資産を持っている場合は一般NISA運用を、投資先の選定が不安で所有資産も少ない場合はつみたてNISAで長期的に安定した運用をするのがセオリーということです。
それぞれの対象年齢層は
- 一般NISA…余剰資金多 + 投資先が選べる → 主に中年以上のベテランが対象
- つみたてNISA…余剰資金少 + 投資先の選定が不安 → 主に若年層が対象
となります。2020年7/20のニュースでも30代のつみたてNISA口座数が3ヶ月で19%増加したと報じられ、若年層の老後資産形成への意識が高まっていることが窺えます。
旧NISA、新NISAの違い
新NISAで変更されたのは主に以下の3点です。
- 非課税になる投資金額の増加
- 投資対象の変更
- ロールオーバーのルール変更
順に見ていきましょう。
非課税になる投資金額の増加
旧NISAでは年間120万円までが上限でしたが、新NISAは投資が2階建て構造となり、1階部分は20万円、2階部分は102万円の計122万円となります。
つまり満了いっぱいの5年で10万円多く投資できます。
投資対象の変更
旧NISAは投資対象が上場株式、ETF、REITや投資信託などでした。
新NISAでは1階部分の20万円の枠がつみたてNISAと同様の対象商品である投資信託、2階部分の102万円は旧NISAと同様のシステムです。
原則として1階部分の投資なしでは2階部分の投資ができないシステムですが、1階部分20万円全てを使う必要はありません。
最低投資金額の数千円ほどを使えば2階部分を利用できます。
これは実質自由投資枠の減少ですが将来の資産形成のため、つみたてNISA対象のインデックスファンド投資の層を厚くしたいという国の意思が見えますね。
ロールオーバーのルール変更
旧NISAにロールオーバーという制度があることは先に述べました。
旧NISAが2023年までの制度でしたので、21019年以降購入の株式および投資信託はロールオーバーできませんでしたが、新NISAの導入で新NISA口座にロールオーバーできるようになりました。よって最大10年間非課税運用が可能となります。
また、NISA満了後につみたてNISAにロールオーバーすることも可能です。これにより最長25年間非課税運用が可能となります。
まとめ
今回の記事では課税の仕組み、NISA、つみたてNISAのシステムの違いと新NISAへの制度改定について述べました。まとめると
- 株式運用利益でかかる税金は基本的に約20%
- 新NISAで102万円 × 5年間 = 510万円が上場株式運用益非課税、20万 × 5年間100万円が株式投資信託運用益非課税
- つみたてNISAは40万円 × 20年間 = 800万円が株式投資信託運用益非課税
NISA制度を利用して税金を抑えながら資産形成を進めていきましょう。
それではまた次の記事で。